由来・歴史
土用餅の由来は、古来の宮中で暑気払いのために食されていた味噌汁にあります。
この味噌汁は、ガガイモの葉っぱを煮出した汁で練って丸めた餅を入れたもので、土用入りの日に食されていました。
やがて、「夏の土用の丑の日」に無病息災を願って体にいい物を食べる風習が定着し、その一つに土用餅が採用されます。
土用は、春土用・夏土用・秋土用・冬土用(立春・立夏・立秋・立冬)と年に4回訪れる季節の区切りで、夏土用の期間にある丑の日が「夏の土用の丑の日」です。
今では夏バテ防止といえばウナギですが、餠に関しても、昔から土用に作った餅を食べると力が湧くといわれ、土用餅を包む小豆あんの小豆にも邪気や災難を打ち払うとの言い伝えがありました。
暑気払い・厄払いの食べ物として、小豆のあんこで餠を包んだ土用餅が選ばれたのは必然だったといえるでしょう。
なお、土用餅は「あんころ餅」とも呼ばれています。その由来は、あんこが衣(ころも)のように餅を包んでいることから、餡衣餅(あんころもち) → あんころ餅になったとする説が有力です。
土用の丑の日に土用餅を食べる習慣がはじまったのは江戸以降です。同時代成立の「日次紀事」(京都の行事記録)には、「土用の入りの日に赤小豆餅を食べれが根が続く」とあり、土用餅の定着がうかがえます。
現代では、夏の土用の丑の日の定番食材はウナギですが、それに負けず劣らず、土用餅を食べる習慣も続いています。
特徴
土用餅は、土用の丑の日に食べられる夏の季節和菓子です。
もち米・小豆あん・水と最小限の材料を用意し、おはぎや牡丹餅のようにお餅をあんこで包んで作ります。
見るからに餅菓子といった風のまん丸い素朴な外観が特徴ですが、お餅の柔らかいモチモチ食感とあんこの豊かな風味、コク、なめらかで上品な味わいが絶品です。
土用の行事食といえば、うなぎが有名ですが、土用餅も土用の丑の日に食べることで邪気を払い、無謀息災で過ごせると信じられています。
また、土用餅は「あんころ餅」とも呼ばれ、京都や金沢など関西・北陸地方を中心に夏の土用の入りの日に食べるあんころ餅は、今や定番として根付いた風物詩です。
なお、土用餅が食される土用の丑の日は、「夏土用」の「丑の日」を指しています。そもそも土用とは、立夏・立秋・立冬・立春と4つの期間におけるそれぞれ直前の18日間です。
このうち立秋前の夏土用、さらに、年周期ではなく“12日周期での十二支の丑”を合わせて、夏の土用の丑の日となります。
となると、必然的に土用餅の役割は、きびしい夏を乗り切るためのエネルギー源です。
年々厳しさが増している日本の夏。暑気払いだけでなく、邪気払い、厄払いもかねる土用餅の重要性は高まっています。
さらには、夏といわず、秋でも冬でも春でも、土用餅はどの時期に食べても、楽しく味わいながら元気を回復できるでしょう。
分類や原材料
分類(水分量) | 生菓子 |
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分類(製法) | 餅物 |
主な原材料 | もち米、小豆 |
利用シーン
夏土用の丑の日に食べるのが定番です。毎年時期になると和菓子各店がこだわりの土用餅を販売します。小豆餡だけでなく栗あんや、きな粉をまぶしたものもあり、店によって味わいや風味が異なるため、食べ比べをするのも一興です。
- 行事食(土用の丑の日)
- 手土産、おもたせ
- おやつ、お茶請け
- 内祝い、ギフト
- 慶事、法事
有名な土用餅
参考資料
- 事典 和菓子の世界(中山圭子著)
- 美しい和菓子の図鑑(青木直己監修)
- あんころ – コトバJapan! – ジャパンナレッジ
土用餅のレビュー
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