由来・歴史
氷室饅頭の歴史は、江戸中期の享保年間(1716年〜1724年)にはじまりました。
片町(現・金沢市の繁華街)の道願屋彦兵衛という菓子職人が創案した「氷室万頭」に由来するといわれています。
氷室万頭は、雪の下で育った麦を用いて作った麦饅頭です。これに饅頭ではなく、萬の頭を意味する「万頭」を冠して、夏負けしない縁起物の和菓子として売り出したところ、大ヒットしたと伝えられています。
後に酒饅頭も作られるようになって広く普及し、現在は氷室饅頭といえば酒饅頭が主流となっています。
また、氷室饅頭の由来としては、当時の加賀藩から江戸の将軍家に献上した氷雪が無事に届くことを願って食べた、“祈願菓子説”も有名です。
当時はまだ冷凍車などもなく、大量の氷を品質を保ったまま運搬するのは難事でした。それで、加賀藩の技術と努力もさることながら、天のご加護あらんことを祈って食べたのが、麦饅頭(氷室饅頭)だったといわれています。
氷献上が行われたのは、旧暦の6月1日(六月朔日)です。新暦では7月1日にあたります。以来、この日は氷にちなんだ行事を執り行う「氷室の日」と定められ、金沢の伝統の風物詩として継承されています。
氷室饅頭は、氷室の日の主要な品目として家庭や学校給食でも食され、あるいは贈答に用いられ、現在は氷献上から無病息災を願う夏の行事食として活躍中です。
特徴
氷室饅頭は、石川県を代表する夏の季節和菓子です。
毎年、7月1日に金沢で開かれる「氷室の日」と呼ばれる氷をテーマにした伝統行事で食されています。
氷室饅頭には麦饅頭と酒饅頭があり、はじめは麦饅頭、のちに酒饅頭も作られ次第にこちらが主流となりました。
麦饅頭は麦粉の生地に小豆あんを包み蒸して作った素朴な饅頭です。昔ながらの食感と風味が特徴で、お酒が入っていないため、子どもから大人までおいしく食べられます。
酒饅頭は、小麦粉にお酒を混ぜて生地を発酵させており、ふっくらとした食感とほのかなお酒の香りに包まれる、風味豊かな饅頭です。
氷室饅頭は「麦」「酒」いずれも中にあんこを入れます。あんこといっても小豆の黒あんだけでなく、白あん、味噌あん、かぼちゃあん等も用いられます。
見た目は、白・赤・緑の三色バリエーションが特徴で、色合いは原色ではなく淡いパステルカラー。氷室饅頭の色にも意味があり、白は清浄、赤は魔除け、緑は健康といわれています。
氷室饅頭を食べる7月1日の氷室の日は、江戸時代、加賀藩から将軍家に氷雪を献上した旧暦の「六月朔日」(6月1日)に由来する行事です。
そのため、見た目は素朴な饅頭ですが、過去に思いをはせながら食べるとき、歴史の重みに身が引き締まります。
そして「氷室」と冠するだけで、不思議と心地よい涼感を呼ぶのが氷室饅頭の魅力です。
分類や原材料
分類(水分量) | 生菓子 |
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分類(製法) | 蒸し物 |
主な原材料 | 小麦粉、小豆あん、砂糖 |
利用シーン
氷室饅頭の主な利用シーンは、毎年7月1日の氷室の日です。地元金沢では、無病息災を願って氷室饅頭を食べたり贈答したりする風習が残っています。県外の方も、期間内に旅行で訪れた際はぜひ買って食べてみましょう。販売時期は6月下旬〜7月1日。2日以降は取扱店が減ります。
- 行事食(氷室の日)
- おやつ、茶請け
- 手土産、贈答用
有名な氷室饅頭
- 越山甘清堂の氷室万頭
- 森八の氷室饅頭
- 石川屋本舗の氷室まんじゅう
参考資料
- 美しい和菓子の図鑑(青木直己監修)
- 氷室|湯湧温泉観光協会
- 氷室饅頭(ひむろまんじゅう)|全国学校栄養士協議会
- 金沢「氷室」考【PDF】
- 金沢の氷室と雪氷利用【PDF】
- 石川県内における金沢縁起菓子の地域分布
- 石川県における行事食の調理文化
氷室饅頭のレビュー
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