由来・歴史
菱餅の由来は草餅にあるといわれています。草餅は、蓬(よもぎ)や母子草などの草を練りこんだ丸型の餅菓子ですが、これが後に菱形に意匠を変え、一個の餅菓子として独立した菱餅になったと伝えられています。
草餅の発祥は平安時代ですが、菱餅の原型が誕生したのは江戸時代です。
それまで長く疫病払いの供え物だった草餅が、新たに上巳の節供(ひな祭り・桃の節句)で用いられることとなり、「お祓い」から「お祝い」へと趣向が変わったため、それにふさわしい装飾的な要請が生まれました。
そこで草餅の改良が行われ、より抽象的で縁起の良い菱形のフォルムを備えた菱餅が作られたといわれます。
ただ、初期の菱餅は今日のそれとは異なる外観だったようです。現在のように3色を重ねるのではなく、1色のみだった可能性が指摘されているほか、その1色も緑の餅、すなわち草餅だけの菱餅だった可能性があります。
その後、菱餅は発展してますます表現豊かになり、江戸末期には2色が現れ、さらに白い餅と赤い餅が加わって、現在のカラフルな3色の菱餅へと変化しました。
厳粛なお祓いの供え物から、めでたくて華やかなお祝いのお菓子へと変容を遂げたのです。
そして現在も菱餅文化の歴史は脈々と受け継がれており、和菓子地図の一隅を照らす存在として、また女の子の健やかなる成長を祈る、ひな祭りになくてはならない「神具」として重宝されています。
特徴
菱餅は、3月3日のひな祭りに食される日本の伝統的な餅菓子の一つです。
もち米や米粉を原料にお餅を作り、砂糖や塩などの材料を混ぜ合わせ、生地を3等分してそれぞれに異なる色を添え、蒸して重ねて最後に菱形に切って完成します。
菱餅の風味や食感は一般的な餅菓子と変わりませんが、見た目は一種独特です。
餅菓子の中でもめずらしい抽象的な菱形のデザインもさることながら、上から順番に赤・白・緑と配したトリコロールカラー(3色)がどことなく意味ありげで、不思議な関心と期待を抱かせます。
それもそのはず、菱餅の3色パターンにはちゃんと意味が込められているのです。
すなわち、春になって雪(白)が解け、下から新芽(緑)が出てきて、桜の花(赤)を咲かせるという、温かみのある季節物語を表現しているといわれます。
ですから、菱餅は特別な材料を使わなくても、ドラマチックな配色デザインの視覚効果により、独特の奥深い豊かな味わいが楽しめます。
他方、地域性も見逃せません。菱餅は3色の組み合わせが定番ですが、実は地域によっては、1色、2色、4色、5色も作られているのです。
素材に関しても、古くをたずねれば、粟、きび、とうもろこし、緑の餅には蓬、母子草、もちぐさ、赤い餅には小豆、とちの実、たかきびを使用する地域もありました。
今も昔も変わらないのは、菱餅が、ひな祭りに欠かせない存在として日本人に愛されていることです。
分類や原材料
分類(製法) | 生菓子 |
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分類(水分量) | 餅物 |
主な原材料 | もち米、よもぎ、食紅 |
利用シーン
菱餅は主にひな祭りの行事食として用いられますが、シーズン中は和菓子屋をはじめスーパー、コンビニ、百貨店等でも購入可能なため、利用シーンもおやつや手土産など自由自在です。材料も揃えやすいため手作りするのも良いでしょう。
- ひな祭りのお供え、配り物(お祝い返し等)
- おやつ、お茶請け
- 手土産、お見舞い
- 手作り
有名な菱餅
参考資料
菱餅のレビュー
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