由来・歴史
栗きんとんの由来は、日本人が古代から食してきた「栗」そのものにあります。
栗の歴史はとても古く、奈良時代(720年)の成立である「日本書紀」(巻30/持統記)には、天皇によって栗の栽培が勧奨されたことが記されています。
当時の栗の用途は、茹でて食べたり焼いて食べたりする程度で、お菓子という風ではありませんでしたが、のちに茹でた栗を‶茶巾に絞る″という造作が編み出され、現在の栗きんとんの原型となるものが出現します。
歴史が動いたのは、江戸時代後期。栗きんとん発祥の地となった、中津川(現在の岐阜県中津川市)においてです。
当時、五街道の一つ「中山道」の途上にあった中津川は、同時に日本有数の栗の産地でもあり、この強みを活かして、当地では多くの菓子職人たちが栗きんとん作りを開始し、またそれを販売する店も続々と創業しました。
栗きんとんの元祖とされる「すや」(1802年創業)をはじめ、「川上屋」(1864年創業)、「ヤマツ食品」(1866年創業)、「松月堂」(1907年創業)など、いずれも現代まで続く老舗ぞろいです。
こうして、栗きんとんは中津川を中心に発展&知れわたっていき、おせち料理の「栗金団」ではなく、「お菓子の栗きんとん」として確固たる人気と市民権を獲得しました。
現在も栗きんとんは、各店が創意工夫による差別化に取り組むなど、どん欲に進化しながら歴史を継承しています。
特徴
栗きんとんは、栗と砂糖だけのシンプルな材料で作る岐阜特産のお菓子です。
作り方は、生の栗を蒸してから中身をとりだし、砂糖を加えて鍋でよく練り上げ茶巾で包み、絞って栗の形に成形します。
見た目は、栗の形をデザインしていますが、上部中央でぎゅっと絞った形状は山ひだの陰影を描写したようでもあり、素朴ながらスケール感のある情景を表現しています。
味わいは、心地よい栗の香りと上品な甘み・旨味のハーモニーが絶品です。シンプルレシピの栗きんとんでは、余分な素材を入れないため、栗本来の自然で濃厚な風味がたっぷりと味わえます。
栗きんとんは一見、お餅のようにも見えますが、食べてみると粘り気はなく、口の中でほろほろと崩れてはとろけていく… デリケートな食感が印象的です。
「栗」という、自然の恵みを最大限に活かした和菓子といえるでしょう。
他方、栗きんとんと聞くと、おせち料理の「栗金団」(くりきんとん)を思い浮かべるかもしれません。
お菓子の栗きんとんとおせち料理の栗金団は、ともに栗を使用する点は同じですがメニューとしては別物です。栗金団は、さつまいもの餡に栗の甘露煮を混ぜて作りますが、お菓子の栗きんとんでは、さつまいもの餡は使いません。味わいや風味、見た目も異なります。
栗きんとんは、栗きんとん。まったく独自の立ち位置を確立している固有の和菓子なのです。
分類や原材料
分類(水分量) | 生菓子 |
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分類(製法) | しぼり |
主な原材料 | 栗・砂糖 |
利用シーン
栗きんとんの味わいと風情はお茶請けにぴったりです。お茶と一緒に堪能すれば、かつて茶会で栗きんとんが嗜まれた江戸時代の雰囲気を味わえること間違いなし。日持ちするものもあるので、手土産に利用するのもOKです。
- おやつ、お茶請け、デザート
- ギフト、プレゼント、手土産
- 法事、法要
- 内祝、誕生日祝、結婚祝い
有名な栗きんとん
- すやの栗きんとん
- 川上屋の栗きんとん
- ヤマツ食品の栗きんとん
参考資料
- 栗きんとん 岐阜県|農林水産省
- 栗きんとんは岐阜の定番和菓子。おせちとは別のもの
- 中部日本におけるクリ菓子産業の地域的集積: 小布施町と中津川市の比較
- ‘栗きんとん’の加工に適するクリ新品種「えな宝来」、「えな宝月」
栗きんとんのレビュー
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