由来・歴史
くず餅の歴史は、関東・関西でそれぞれ由来や発展のいきさつが異なります。
関東のくず餅である「久寿餅」は、江戸後期の大師河原村(現川崎市川崎区)に住んでいた久兵衛という男が、発酵した小麦粉のでん粉を蒸して餅を作ったのを起源とするのが、ほぼ定説です。
久兵衛は何かを作ろうとしたのではなく、小屋に蓄えた小麦粉が雨に濡れてしまい、それを樽に放置して翌年になって見てみると、小麦が発酵しでん粉ができていたため、このでん粉を水洗いしてから蒸したところ、期せずしてオリジナルの餅が完成しました。関東のくず餅の誕生です。
時あたかも、日本が大飢饉に見舞われた天保年間(1831年~1845年)。久兵衛が思いがけなく創作した餅は、多くの人々を飢餓から救ったと伝えられています。その後、久寿餅は江戸庶民の間で広まり大衆和菓子となっただけでなく、和菓子界における発酵食品の開祖にもなりました。
一方、関西のくず餅こと「葛餅」は、原料の葛粉の「葛」に由来します。葛の名はもともと奈良県吉野地方に住んでいた「国栖人(くすびと)」に源流があり、この国栖人が販売していた葛が、最初は薬草や米麦の代用食とされましたが、後にお餅の原料となり、関西を中心に広まったといわれています。
現在は葛粉で作るくず餅は少なくなりましたが、それでも、くず餅といえば葛餅といわれるほど、圧倒的なブランドを確立しています。
特徴
くず餅は、葛粉や発酵した小麦でん粉に水、砂糖を加えて蒸して作る日本の伝統的な和菓子です。
餅菓子の一種ですが、ゼリーのようにプルンとした涼感のある見た目と溶けるような食感が特徴で、トッピングにきな粉と黒蜜をかけて食べるのが定番です。
くず餅は、関東では「久寿餅」、関西では「葛餅」と呼ばれます。共にくずもちと読みますが、原材料や外観、食感は微妙に違います。
まず関東風は、小麦を発酵させた発酵小麦でん粉が原料です。和菓子界きっての発酵食品として知られ、白く濁った乳白色に三角形、四角形などおでんの具材を思い浮かべさせるような素朴な形状と、軟らかくて粘りの少ない食感、ほどよい弾力、歯切れの良さなどが特徴となっています。
一方、関西風のくず餅こと葛餅は、「葛」というマメ科の植物から採取した葛粉(葛のでん粉)で作ります。葛粉に水と砂糖を加えて蒸して練り上げ、冷やし固めたら完成です。
葛餅は、水晶のようにほぼ無色透明で、その瑞々しい姿にたがわず食感がつるんとして、なめらかな舌触りも良好です。ただ、葛粉は高価な希少食材であるため、最近はジャガイモやサツマイモのでん粉を代替品とするケースが多くなっています。
このように、くず餅には、それぞれタイプの異なる久寿餅と葛餅が存在しています。
どちらも歴史が古く、きな粉と黒蜜をかけて食べる風味豊かな味わいは、共通の魅力です。
分類や原材料
分類(水分量) | 生菓子 |
---|---|
分類(製法) | 蒸し物 |
主な原材料 | 関西:葛粉・砂糖 関東:発酵小麦でん粉・砂糖 |
利用シーン
くず餅は夏の和菓子のイメージですが、実は3月、12月など寒い時期にも食されるオールシーズン対応です。菓子としてはもちろん、葛粉には体温を温める効果や、女性ホルモンを補助するイソフラボンが含まれているため、健康・美容食品としても優秀です。
- おやつ、お茶請け
- 贈り物、お礼、手土産
- 法事、お供え
- 健康/美容食品
有名なくず餅
参考資料
- 久寿餅(くずもち)と発酵小麦デンプン|農畜産業振興機構
- くずもち:江戸期発祥「関東風くずもち」|紀文アカデミー
- 久寿餅のいわれ|川崎大師 山門前 住吉
- 葛餅 奈良県|うちの郷土料理:農林水産省
- 「くず餅」東と西で別モノ?(謎解きクルーズ)- 日本経済新聞
くず餅のレビュー
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