由来・歴史
練り切りの歴史が幕を開けるのは、江戸初期の京都においてです。
それ以前に、室町から戦国、安土桃山、江戸期へと時代を経て、京都で発展を遂げた茶の湯文化に育まれ、多種多様な茶請けとしての菓子が生み出されていく中、練り切りもその一つにラインナップされました。
練り切りの基本素材である白あんに関しては、1603年刊行の「日葡辞書」(日本イエズス会)に「白豆、志ろあづき」「あらいこ又ハ饅頭の白あんに用ふ」との記述があり、近世にはすでに白あんが存在し菓子に用いられていたことが分かります。
とすると、練り切りのベースが白あんにあると仮定した場合、その白あんが歴史の表舞台に姿をあらわした近世(戦国~江戸)を、練り切りの発祥と定めるのは自然な流れです。
やがて京都から江戸へ、さらには全国へと広がっていった練り切りは、手品のような意外さで意匠性を深めつつ、‶芸術和菓子″としての確固たる地位を築くことになりました。
特に近世以降は、社会の安定と経済の発展、それに伴い砂糖の流通量が増大したことで、練り切りを作りやすい環境が整備されました。
中世と比べて菓子職人や菓子専門店も増えたため、互いに切磋琢磨する中でデザインセンスや創作技術も磨かれていったことでしょう。
果たして、現代の私たちが目にする練りきりの世界は、高度に洗練された美しさに満ちあふれています。
特徴
練り切りは、白あんをベースに求肥や小麦粉などの材料を加えて何度も練り上げて作る、デザイン性豊かな和菓子です。
技巧をこらした繊細な意匠を特徴とし、桜や花火、うさぎ、椿、梅など春夏秋冬の風物詩をはじめ、動物、自然、風景、キャラクターに至るまで、さまざまな情景を反映した菓子の美的世界を演出しています。
練り切りの成形性を高めているのは、求肥や山芋などの‶つなぎ″と呼ばれる素材達。練り切りあん(白あんに砂糖を加えて練り上げたベース生地)につなぎを投入することで加工しやすくなり、さらにそこへ着色粉を効果的に用いることで、好みの色や形が作れるのです。
生地を練ったり調整したりしながら形を整える製法は、「練り物」と呼ばれます。
練り切りは生地の中に餡を包むのが常道で、中餡として白あん・黒あんを入れて「包餡」するのが一般的です。シンプルな材料で構成されていますが、上品な甘さと滑らかな口当たり、程よいもちもち感など、ビジュアルにひけをとらない豊かな味わいを提供してくれます。
それどころか、美しい色彩と意匠を楽しみながら食べられる練り切りの味は、幸福感がひとしおです。心が浮き立つような芸術を前に、食べるのがもったいと感じてしまうこともあります。
このように、味覚と視覚の両方を満足できるのが、練り切りの強みといえるでしょう。
分類や原材料
分類(水分量) | 生菓子 |
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分類(製法) | 練り物 |
主な原材料 | 白あん・砂糖・山の芋・みじん粉 |
利用シーン
ビジュアルの多様性に富んだ練り切りは、シーンに合わせて形や色を選べるのが利点。茶請けが定番ですが、日常使いや贈り物にも活用できます。材料も作り方も簡単なので、マイ練り切りを創作するのも良いでしょう。
- 茶請け、茶会、和テイストの儀式、
- 普段のおやつ、スイーツ
- プレゼント、ギフト、贈答
- 法事、行事、記念日
有名な練り切り
参考資料
練り切りのレビュー
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