由来・歴史
茶通(ちゃつう)の名前の由来は、日本の伝統的食器「楪子(ちゃつう)」からきています。
楪子は懐石家具として知られていますが、かつては菓子器として茶菓子を盛るのにも用いられました。
朱塗りの木皿の下に、ほどよい高さの足台をつけた楪子の構造は、茶菓子を盛るのに便利だったでしょう。
茶通の名は、この楪子にちなんで付けられたといわれています。
ただ、和菓子としての茶通がいつ・どこで・どのように誕生したかについては、詳しい話が伝わっていません。明治時代の製法書「実験和洋菓子製造法(1905年)」には「茶津宇」として名があるため、遅くとも明治時代には作られていたのでしょう。
古くから伝わる和菓子…とはよく耳にするフレーズですが、茶通の詳細な由来・歴史はその多くが謎に包まれています。
一方、茶通と切っても切れない関係にあるのは日本のお茶文化です。
「茶通」という名称からすでにそうですが、前出の楪子との関係性や、生地の表面に茶葉を散らして焼き上げるレシピも含めて、茶通がお茶文化を背景に生まれた和菓子だったことは想像に難くありません。
とすれば、お茶は奈良・平安時代に中国より伝来したため、茶通の誕生はそれ以降ということになるでしょう。
現在の茶通は一つの和菓子として親しまれるだけでなく、お茶文化の発展や継承にも貢献。茶請けにうってつけの菓子として、全国各地で、緑茶のあるところ、飲まれるところで茶通も一緒に食されています。
さすがに楪子の影は薄いのですが、想像力を働かせることで、残像としてしのぶことができます。
特徴
茶通は、薄力粉など小麦粉をベースに卵白、砂糖、抹茶等を練り混ぜて作った生地に小豆あんを包み、焼いて作る和菓子です。
京都銘菓の焼饅頭の一種であり、茶津宇または楪津宇と表記することもあります。
茶通のレシピは、中餡にこしあんを入れる、オーブンで焼く際は上部にお茶の葉を2、3枚のせて焼くのがポイント。
仕上がりは地味ながら、上下面に刻まれる焼き跡と上面に茶葉をちらした素朴な情景が、いかにも日本人向きな焼き菓子です。形状は円筒型・丸型が一般的ですが、方形につくったものもあります。
茶通の味わいは素朴さが魅力です。カリッとした香ばしい生地の食感と、しっとり上品な餡の甘み、昔懐かしい抹茶の香りが絶妙なハーモニーを奏でます。
特に、ほのかな抹茶の苦みと餡の甘さがナチュラルに融合する風味の調和は、おいしいというより芸術的です。見た目は地味で素朴でも、和菓子としては子供から大人まで幅広い世代に人気があります。
一方、茶通は生菓子か半生菓子かの境界がはっきりしません。焼き方や製品によって水分含量が変化するため、製品ごとに味わいや風合いに違いが出てくるのです。
基本的には生菓子の部類になりますが、作り手によって生菓子になったり半生菓子になったりします。その違いを食べ比べてみるのも茶通の楽しみの一つです。
分類や原材料
分類(水分量) | 半生菓子 |
---|---|
分類(製法) | 焼き物 |
主な原材料 | 砂糖、卵白、小麦粉・挽茶・小豆餡 |
利用シーン
茶通はお茶を題材にした和菓子です。お茶請けに合うのはもちろん、おやつや間食などの普段使い、お祝い、ギフト、お供えなどにも対応。時期は新茶シーズン(5月)が理想ですが、通年楽しめるお菓子でもあります。日持ちは3日~1週間程度が目安です。
- おやつ、お茶請け
- 手土産、ギフト、来客菓子
- お祝い、お見舞い、お供え
有名な茶通
参考資料
- 茶通 | レシピ – 富澤商店
- 色々な和菓子の説明|お菓子何でも情報館
- 菓子(その2)|宮内昭 西浦孝輝
- 「棡 (杠)」「楪」 と 「ゆずりは」
- 楪子(ちゃつ)
- 事典 和菓子の世界(中山圭子著)
茶通のレビュー
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