由来・歴史
ゆべし(柚餅子)の由来は、源平時代(平安末期から鎌倉幕府成立まで)の保存食に見られます。
当時は平家と源氏の二大武士勢力による覇権争いが行われていた熾烈な戦いの時代。武器だけでなく食料(兵糧)も重要視され、特に簡単・迅速に食べられる携帯食を武士達は必要としていました。
そこで用いられたのが、ゆべしです。
当時はゆべしの原料である柚子が豊作だったときで、無駄にしないため蒸して干したり漬物にしたりと、保存食としての加工を施しました。これが武士達の戦闘糧食の需要にフィットして、ゆべしの発展・普及のきっかけになったと見られています。
保存加工をした、ゆべしは思いのほか人気だったようです。例えば、源平合戦にも参加した肥後菊池郡(現熊本県菊池市)の豪族・菊池一族は、ゆべしの日持ちのよさに注目し軍用食に用いたと伝承されています。
さらに、ゆべしは戦国時代でも携帯食として活用され、時代がすすんだ幕末においても、十津川郷士(天皇を警護した郷士集団)によって兵糧食とされたことが伝えられています。
他方、江戸時代以降は、発達した茶道や食文化の影響を受け、徐々に携帯食から和菓子へ変化しました。蒸し菓子にしたり餅菓子にしたり、素材や製法のバリエーションも劇的にふえていきました。
ゆべしは現代へ向かうにつれて戦場から遠ざかり、やがて自由で奥深い和菓子文化に深く根をおろしたのです。
特徴
ゆべしは、全国各地に分布する柚子を用いた香りと食感のよい和菓子です。
柚子をベースに米粉、餅飴、味噌、砂糖、醤油など好みの材料を混ぜ合わせ、練ったり蒸したり煮詰めたりして作ります。
ゆべしの漢字表記は「柚餅子」。つまり柑橘類の柚子をモチーフにしたお菓子ですが、実際はくるみを使用したゆべしも存在するなど、作り方や見た目、味わいなどは地域によって異なっています。
大きくは「柚子系」と「くるみ系」に分類が可能です。
柚子系のゆべしは西日本で多く見られるのに対し、くるみ系のゆべしは福島・山形など東北や関東で主流となっています。
例をあげれば、熊本県人吉・球磨地域では、柚子の中身をくり抜いた容器の中に味噌、ピーナツ、ごま、しょうが、唐辛子といった素材を詰めこみ、蒸して2週間天日に干して柚餅子を作ります。
逆に同じ熊本県の菊池市では、米粉にすりおろした柚子の皮、味噌、砂糖を混ぜ合わせ、「竹の皮」に包んで蒸す製法が特徴です。
一方、くるみ系のゆべしでは、福島・山形など東北地方にもともとあった独自のお餅に、柚子ではなく、くるみを練りこんで作った「くるみゆべし」が、地元の名産和菓子となっています。
柚子の爽やかな香り、くるみのしっとりした食感、その他、地域ごとに多彩な材料を用いたオリジナルの味わい…
ゆべしは柚子をテーマに掲げつつ、実際は柚子に固執しない自由な変化に富んでいます。
分類や原材料
分類(水分量) | 半生菓子 |
---|---|
分類(製法) | 蒸し物・餅物 |
主な原材料 | 柚子、もち米粉、水飴、砂糖 |
利用シーン
ゆべしは和菓子ですが、おやつだけでなく、お酒のつまみやおかずとしても食されます。種類が豊富で味わいも多彩なため、商品に合わせて用途を決めたり、逆に用途に合った商品を選ぶことも可能です。時期は種類によりますが、基本的に通年でいつでも食べられます。
- おやつ、お茶請け
- お土産、ギフト
- 自分へのご褒美
- 手作り
有名なゆべし
参考資料
- 熊本の郷土料理の背景とその特徴(第2報)
- ゆべし 徳島県|うちの郷土料理:農林水産省
- 柚餅子 熊本県|うちの郷土料理:農林水産省
- 柚餅子 岡山県|うちの郷土料理:農林水産省
- 十津川ゆべし(とつがわゆべし)
ゆべしのレビュー
*準備中です
→ トップページへ