由来・歴史
けんぴの歴史は、平安時代に中国大陸から伝来した「唐菓子」を原型とする説や、室町時代にやはり中国から伝来した点心(中国の軽食)の一つを起源とする説があります。また土佐の名産・白髪素麺の製法をヒントに生まれたともいわれています。
「けんぴ」の名称は、堅い干菓子であるのを由来とするのがほぼ定説で、漢字で「堅干」と表記することが多いですが、同時に「健肥」、「犬皮」とする場合もあります。
さて、起源は定かでないとしても、けんぴが江戸中期には和菓子文化に定着していたとする説は、ほぼ確実です。
1688年、土佐藩の御用菓子司を務めていた西川屋才兵衛(現在の西川屋の初代・創業者)が赤岡に菓子店を開き、土佐の藩主(山内家)にけんぴを献上していた話が伝えられています。
そしてここで注目すべきは、西川屋のけんぴが、創業と同時に殿様だけでなく、一般民衆向けにも販売されていたことです。和菓子の多くが、明治期以降にようやく大衆化を成し遂げた経緯を考え合わせると、けんぴはその点で先んじていたことがわかります。
後に、けんぴから派生した芋けんぴも登場し人気を博しますが、両者が統合したり吸収されたりすることはありませんでした。
けんぴはけんぴとして、従来からの形と味を受け継ぎつつ、高知銘菓としての確固たる地位を守り続けています。
特徴
けんぴは、小麦粉や砂糖、卵、水などを原材料として作る、高知県の郷土菓子です。
干菓子の一種であり、小麦粉その他の材料を混ぜ合わせた生地を練って薄く延ばし、細切りにしてから焼き上げると、堅牢なけんぴが完成します。
見た目は、細長い棒状の形が特徴です。丸みを帯びた円筒形の外観は、さながら葉巻のようでもあり、シンプルながらも嗜好性を加えたデザインとなっています。
味わいは…‶苦あれば楽あり″と表現するのが適切です。頑丈な造りのけんぴは、最初は堅くて食べるのが大変ですが、ザクザクとした食感を通り過ぎ、さらにそのまま食べ続けると、少しずつ口の中で柔らかく溶けてゆき、やがて風味豊かな香りに包まれていきます。
けんぴは、300年以上の歴史を持つ伝統菓子。江戸期の人々が好んで食した干菓子とはこういうものであったかと思ったりします。
他方、けんぴと聞くと、芋けんぴを想像するかもしれません。
芋けんぴは、けんぴから派生した菓子ですが、両者は主原料を異にしています。‶元祖けんぴ″の主原料は小麦粉ですが、芋けんぴでは、さつま芋を使用します。
作り方も、元祖けんぴが生地を細切りにしてから焼き固めるのに対して、芋けんぴは、生地を油で揚げてから乾燥して仕上げる製法です。
ただし両者ともに、強烈な堅さの向こうにある爽快で豊かな味わいを魅力とする点は、変わりません。
分類や原材料
分類(水分量) | 干菓子 |
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分類(製法) | 焼き物 |
主な原材料 | 小麦粉・砂糖 |
利用シーン
けんぴは、日常使いからお祝いまで広く対応しますが、贈答用の場合は要注意。けんぴは非常に堅いお菓子であるため、贈る相手の歯の状態や調子を確認しておく必要があります。逆に歯が健康であれば、堅いけんぴは咀嚼により脳を活性化するのに有効です。
- おやつ、お茶請け、間食
- 土産品、ギフト、お祝い
- 法事、法要、見舞いなど
有名なけんぴ
- 西川屋老舗「ケンピ」(高知県)
参考資料
- 伝統のお菓子 ケンピ|西川屋
- 土佐ケンピものがたり
- 奥深い和菓子の味わい【PDF】
- 事典和菓子の世界(中山圭子著)
けんぴのレビュー
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