由来・歴史
落雁(らくがん)の起源や由来には諸説ありますが、日本ではじまったのは室町時代といわれています。
当時、中国明朝との貿易が盛んに行われ、さまざまな商品が日本に輸入されるなか、“軟落甘(なんらくかん)”という中国菓子が日本に渡来。この軟落甘が落雁の祖先になったといわれ、名称も軟落甘の「軟」を取り去って「落甘」⇒「落雁」となりました。
その後は、茶の湯の普及に伴って露出が多くなり、茶道の振興に引き立てられる形で落雁の認知度が高まったのではないかと見られています。
室町期はまさに、のちに千利休ら多くの茶人を輩出して隆盛を極める、日本茶の湯文化の先駆けとなった時代でした。
こうして歴史の表舞台に登場した落雁は、近代に入ってさらにブレイクします。
1581年(戦国時代)には、菓子屋の板倉弘方が「御所落雁」(今日の糸巻御所落雁)の製造を開始したほか、江戸初期には茶菓子としての落雁が広く認められた存在になりました。
そして江戸中期に入ると、上菓子の流行や11代将軍家斉公による木型製作の奨励などもあり、大いに名をあげた落雁は、日本三大銘菓を総なめにするほどの確固たる地位を築くことになったのです。
今日の落雁は日常化という点では後れをとっていますが、かえってそのことが独自性を際立たせるものとなり、逆境の和菓子業界にあって貴重な文化遺産のように燦然とした輝きを放ちつづけています。
特徴
落雁(らくがん)は、打ち物の代表格と目される伝統的な干菓子です。
菓子というより、鋳物に近似しており、穀物・砂糖・ネキ水などの材料を木型に入れて成型し、冷やし固めて打ち出す(抽出する)工程は、「打ちもの類」とも呼ばれています。
主材料に和三盆糖や上白糖、副材料に米粉や豆などの穀物粉を用いるのが常道で、これに同量の水と水飴を掛け合わせたネキ水を加えることで、上品な甘さと風味、一種独特の食感をもつ、洗練された味わいの菓子に仕上がります。
味覚もさることながら、視覚にうったえる美しい造形も落雁の真骨頂。四季折々の草花や果物、魚、貝、にわとり、船、その他さまざまな風物や縁起物をモチーフにした繊細な彫刻と色彩は、神々しいまでの華やかさに満ちています。
利用シーンは祝儀用や茶道用が多くを占めており、日常使いで見かける機会は少ないですが、実は普段のおやつにもぴったり。落雁の食べ方はそのまま食べても良いですが、コーヒーや紅茶など飲み物に入れたり、ヨーグルトにトッピングしたり、フルーツゼリーにしてみたり、各自思い思いのアレンジレシピを用いることで、高貴な落雁を身近なお菓子に作り変えられます。
上品な甘み、心地よい香り、溶けるような食感、美しい造形、ほろほろした歯ざわり…
五感のすべてで味わえる落雁は、和菓子のなかでも特に個性の際立つ稀有な存在です。
分類や原材料
分類(水分量) | 干菓子 |
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分類(製法) | 打ち物 |
主な原材料 | 澱粉を含む粉(米や豆、蕎麦、栗などから作った)・砂糖 |
利用シーン
芸術品のような美しい見た目と洗練された味わいの落雁は、ハレの舞台や特別な日の記念品として最適。食べるだけでなく観賞用として使用するケースも少なくありません。アレンジ次第で日常使いにも対応可能です。
- 茶請け、茶菓子
- 法事、お盆、葬儀、供え物
- 結婚祝い、長寿祝い、棟上げ
- お土産 ギフト、ご挨拶、お配り
- おやつ、間食、コーヒーや紅茶に入れる
有名な落雁
- 森八「長生殿(ちょうせいでん)」(石川県)
- 越乃雪本舗大和屋「越乃雪(こしのゆき)」(富山県)
- 風流堂「山川(やまかわ)」(島根県)
参考資料
落雁のレビュー
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