春の和菓子には菱餅、草餅/よもぎ餅、さくら餅、花見団子、柏餅などがあります。
春の和菓子は?
春は出会いと別れが新しい人生を運んでくる季節。卒業、入学、転勤、入社、結婚、引っ越し…その営みは多様性に富んでいます。春の和菓子もそれにならい、各々固有の風習や行事にちなんだ多様な和菓子が勢ぞろいです。
春の風物詩を取り入れた「花見団子」「さくら餅」、宮中儀式や祭事をルーツにもつ「あこや」「いが餅」「ちまき」、お茶文化とゆかりの深い「茶通」もあります。
このページでは、春を彩る和菓子9選をピックアップ。それぞれの特徴をダイジェストで解説していきます。
春の和菓子一覧
菱餅
菱餅は、3月3日のひな祭りに供えられる行事食の一つ。米を原料とした餅菓子ですが、菱形に赤・白・緑の3色を配した個性的なビジュアルが魅力的です。ルーツは疫病払いに用いられた草餅にあります。江戸時代、草餅が上巳の節句(ひな祭り)に供されることになった際、改良が行われ、縁起の良いフォルムを備えた菱餅が誕生しました。
草餅・よもぎ餅
草餅・よもぎ餅は、お餅によもぎの葉を練り込んで作った春の和菓子。毎年3月3日の上巳の節句に食べる習慣が継承されています。外見はナチュラルですが、さわやかなよもぎの香りが食感を引き立てる草餅は食べ応え十分です。平安期までは「母子草」、室町以降、よもぎが使われはじめ、江戸期に入ってよもぎを使った草餅が定着しました。
さくら餅
さくら餅は、食紅で染めた桜色のお餅を、桜の葉で包んで食べる桜づくしの餅菓子です。関東風と関西風の2種類に大別され、関東風はクレープ状に成形し、関西風はおはぎのように丸めて作ります。いずれ劣らぬ春にふさわしい爽やかなフィーリングが持ち味です。起源は江戸中期。長明寺の門番が桜の落ち葉を再利用して作りました。
花見団子
花見団子は、三色団子に竹串を通して作った春の定番和菓子。文字通り、桜やツツジなどお花見の際の茶菓子として用いられています。三色はピンク(桜)、白(雪)、緑(新芽)を採用し、冬から春に至る季節物語を連想させるナチュラルなフィーリングが魅力ポイントです。誕生は安土桃山時代。江戸期には茶会にも供されていました。
あこや
あこやは、お餅やういろうの生地にあんや金団をのせて作る春の季節和菓子です。名前に冠した「アコヤ貝」を模した神秘的なデザインと、白・緑・ピンクなどカラフルな配色に特徴があります。関西地方では古くから子宝・安産を願って食されてきた歴史があるほか、春の定番行事である上巳の節句にも用いられてきた神聖な和菓子です。
いが餅
いが餅は、米で作ったお餅の表面に米粒を散らして食べる伝統和菓子です。見るからにお餅といった感じの風貌ですが、表面にまぶした米粒によって神秘的な雰囲気を漂わせています。由来は諸説あり、厄除けや招福、雨乞い、豊作祈願など祭事用のお菓子として用いられてきました。宮中に納めた嘉祥菓子の一つだったともいわれています。
柏餅
柏餅は、米粉で作った餅にあんこを入れ、柏の葉で包んで食べる餅菓子です。5月5日の端午の節句に供する行事食として知られ、古くから全国各地で親しまれています。柏の葉は 「新芽が出るまで古い葉が落ちない」といわれ、それが「家系が絶えない」とする縁起に結び付けられて“包み”とされました。葉っぱで包む餅菓子の代表格です。
ちまき
ちまきは、お餅を三角形または円錐型に整え、笹の葉で包んで食べる和菓子です。古代中国より端午の節句とともに伝来し、日本でも行事食として長年供されてきました。ちまきの中身は、西日本では白くて甘いお団子、東日本では「おこわ」を入れます。具材や葉っぱの種類も含めて多様性に富んだ和菓子です。中華風のちまきもあります。
茶通
茶通は、小麦粉を練った生地にあんこを入れて焼き上げる、焼饅頭の一種です。オーブンで焼く際、上部表面にお茶の葉を2、3枚のせて焼くと完成します。名称は伝統的食器「楪子」(ちゃつう)が由来といわれるほか、お茶文化とのつながりも深いなど、日本の伝統文化を背景に育まれてきた混じりっけなしの純粋な和菓子です。
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